「ソプラノのマリア・カラスはメゾソプラノ役も演じたりしますが、通常メゾソプラノがソプラノ役を演じたりする事はありますか」という専門性の高い質問を、とある著名な学者の方からいただきました。
私はドイツの音楽大学で学んだのですが、留学して割とすぐに私の声が「Zwischenfach(ツヴィッシェンファッハ=ソプラノとメゾソプラノの中間の声)であることを、どの先生方にも断定されました。
その声の持ち主は暗黙の了解で、ドラベッラ、ロジーナ、サントゥッツァ、カルメン、マリー(ヴォツェック)、ジークリンデなどの役を一通り学んでいきます。
これらはソプラノが歌ったり、メゾソプラノが歌ったりする役柄です。
尚、メゾっぽく響かせたい!などの欲のために中低音を暗く作ってしまうと、
声が劇場で飛ばなくなったり、高音との響きが揃わなくなるので、
思い切って明るい響きのまま中低音を歌う必要があります。
そのため聴く人によっては、私のような声はソプラノに聴こえたりします。
歌曲は半音単位で移調して準備しますが、
アリアやオペラ一本となると、様々な工夫やアプローチが必要です。
昔はどっちつかずの声に悩んでいた時期もありましたが、
今となっては人の2倍の役を歌えるような気がして、逆に得をしたような気分でいます!
私はレッスンの中でも、ソプラノやメゾソプラノだと最初から決めつけずに、
生徒さんが持つ音色や倍音や、更にはお人柄を考慮した曲を、
敢えて声域は関係なく選ぶように工夫しております。
最終的にはその方が、本来の自分の声を見つける近道になるのではないかと思っています。