ドイツ留学時代にレパートリーとして勉強していたこの曲を、この度ピアノ伴奏版で公開することになりました。
オーケストラ版では度々演奏されていますが、ピアノ伴奏版の録音や録画がないのは、ピアニストにとって間違いなく超絶技巧が散りばめられた難曲であり、手の大きさが必要であることも関係するかもしれません。
近年日本中で活躍されている現役ピアニストの松田祐輔さんが、今回細部に渡るまでオーケストラの音色を見事に再現しており、後奏も必聴です。
私はそんな松田さんのピアノを聴きながら、ドイツ語のニュアンスに浸り、無調の中にたまに顔を出す抒情的なメロディを味わいながら演奏を心から楽しむことができました。
下記に意訳を載せていますので聴きながらぜひご参照くださいませ。
近現代ドイツ歌曲は魅力的な作品の宝庫なので、引き続きこのような作品に積極的に取り組んでいく所存です。
A.ベルク作曲『ワイン』より「孤独者のワイン」(ピアノ伴奏版世界初演)
メゾソプラノ 高橋華子
ピアノ 松田祐輔
From the Spring Concert and Italianwine Experience of Liberal Arts Society vol.3
Live recording,Tokyo,30.03.2024
「その浮気な女の不気味な視線は
白い光のように私に滑り込む。ゆらゆらと揺れる湖の上に輝く月光のように、水浴びをしながら己れの美しさを見ようというのだ。
賭博台の上にあるのは最後の銀貨。
痩せたアデリーネの生意気なキス。
眠たくなるようなバイオリンの音。
人間のうめき声のような音楽!
これらすべてより、私にとって大切なのは深いビンなのだ。
その強い芳香を私は吟味する。
それは繊細な詩人の疲れを癒すものであろう。
そしてお前は彼に希望と愛と若い力、誇りを与える。これら全ては乞食の遺産でもあり、われらを英雄や神にも変えてしまう遺産なのである。」
※ボードレール 詩集「悪の華」より